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谷津干潟

(やつひがた)

谷津干潟は、千葉県習志野市に位置する貴重な自然環境です。国指定谷津鳥獣保護区、ラムサール条約登録地、日本の重要湿地500にも指定されており、自然保護と観光の両面から注目されています。この美しい干潟は、渡り鳥の休息地としても知られており、さまざまな生態系が広がっています。

干潟の概要と歴史

埋立と都市化の進行

谷津干潟周辺では、都市化が急速に進んでおり、干潟の上には高架橋が架かっています。1984年以降、干潟は京葉線や東関東自動車道の建設に伴い、埋め立てが行われ、次第に分断されていきました。これにより、干潟の形状は変化し、現在では人工的なラグーンのような形態で残されています。

1960年代から1970年代にかけて、東京湾岸の干潟は次々に埋め立てられ、千葉県習志野市でも多くの干潟が消失しました。しかし、谷津干潟は利根川放水路計画により埋め立てを免れ、希少な自然環境として保護されています。

保護活動と国指定保護区への指定

1970年代には、渡り鳥の重要な生息地であることが指摘され、保護活動家たちの努力により、干潟の保全が進められました。1977年には環境庁(現・環境省)が鳥獣保護区に指定し、1988年には国指定の谷津鳥獣保護区として正式に登録されました。さらに、1993年にはラムサール条約登録地としても認定され、国際的に保護されることとなりました。

谷津干潟の自然環境

鳥類の多様性

谷津干潟は、年間を通じて約80~100種の鳥類が確認されており、その中でもシギ類、チドリ類、カモ類などの水鳥が多く見られます。これらの水鳥たちは、干潟で採餌を行い、その生息環境が維持されています。特にセイタカシギは定着しており、全国的にも貴重な存在です。

鳥類の減少

しかし、1970年代には「空が隠れるほど飛んでいた」とも言われた鳥類の個体数は、近年では減少しています。環境省の調査によると、1990年から2010年にかけてシギ・チドリ類の確認個体数は4分の1に減少しました。この減少は、干潟の環境変化が影響していると考えられています。

魚類と底生生物

谷津干潟にはアカエイやボラ、スズキ、マハゼといった魚類が生息しており、回遊魚の稚魚が成長する重要な場となっています。2017年から2018年の調査では、28種の魚類が確認されました。

また、干潟の底生生物としてゴカイ類やホンビノスガイ、ホソウミニナなどの貝類が確認されています。これらの生物は、干潟の生態系を支える重要な役割を果たしていますが、近年ではゴカイ類の減少が懸念されています。シギ・チドリ類の生息環境が悪化している原因の一つと考えられています。

藻類とグリーンタイド

谷津干潟では、1995年頃からアオサ類による「グリーンタイド」が発生し、干潟が緑色に見えるほど繁茂しました。このアオサの繁茂は、生物多様性に貢献する一方で、腐敗時には悪臭を放ち、周囲の住環境に悪影響を及ぼしていました。

しかし、2017年夏以降、アオサの繁茂が突然減少しました。原因は明らかではありませんが、一斉に腐敗した際に胞子が残らなかった可能性が指摘されています。

保護運動の歴史

保護運動の発端

谷津干潟の保護運動は、1971年に「千葉の干潟を守る会」が設立されたことから始まりました。代表の大浜清を中心に、干潟の埋め立てに反対する活動が展開されました。この運動は、徐々に市民の支持を集め、1977年には環境庁が干潟を鳥獣保護区に指定するきっかけとなりました。

森田三郎の活動

保護運動の中でも特に注目されたのが、森田三郎の活動です。彼は1974年からゴミ拾いを始め、個人で干潟の保護活動を展開しました。森田の活動は多くの市民を巻き込み、谷津干潟の埋め立て中止と保護に貢献しました。森田の活動は児童書や漫画、テレビ番組でも紹介され、広く知られています。

谷津干潟自然観察センター

自然観察センターの役割

谷津干潟には、干潟の自然を学び、親しむための施設として「谷津干潟自然観察センター」が設置されています。このセンターでは、干潟の保全や渡り鳥の観察をサポートする活動が行われており、ボランティアも活躍しています。また、周囲には観察路が整備されており、散策しながら自然を楽しむことができます。

施設概要

センター内には観察スペース、図書館、カフェ、売店などがあり、訪れる人々が干潟の自然に触れ、学ぶことができます。観察スペースでは、望遠鏡を使って渡り鳥の観察が可能で、特にシギ・チドリ類の飛来シーズンには多くの観光客が訪れます。

アクセス情報

鉄道でのアクセス

谷津干潟への最寄り駅は、JR京葉線の「南船橋駅」や「新習志野駅」、京成電鉄の「谷津駅」です。各駅からは徒歩20~30分程度で谷津干潟自然観察センターに到着します。また、津田沼駅からは京成バス「谷津干潟」行きが運行されており、バスでのアクセスも便利です。

自動車でのアクセス

自動車で訪れる場合、東関東自動車道「谷津船橋インターチェンジ」や「湾岸千葉インターチェンジ」を利用することができます。谷津干潟公園には駐車場も完備されており、観光客が安心して訪れることができます。

まとめ

谷津干潟は、埋め立てが進む東京湾岸において、貴重な自然環境を残す場所です。渡り鳥の休息地としても重要であり、保護活動家たちの努力によって守られてきました。現在では、自然観察センターを中心に多くの人々が干潟の自然を楽しむことができる観光地としても人気を集めています。アクセスも良好で、家族連れや自然愛好家にとって魅力的なスポットです。

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谷津干潟
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