境内の雰囲気と特徴
標高80mの松尾山に鎮座する神社
高瀧神社は、房総半島のほぼ中央に位置する標高80メートルの松尾山に鎮座しています。周囲を深い森に囲まれた境内は、古来より神聖な空間とされ、訪れる者の心を穏やかにしてくれます。
朱塗りの社殿と静寂の石段
神社の参道を進むと、苔むした石段の先に鮮やかな朱塗りの社殿が姿を現します。厳かな雰囲気に包まれたこの社殿は、現在のものが享保12年(1727年)に再建されたもので、市原市の文化財に指定されています。
安産の神「底なし袋」信仰
高瀧神社には、「底なし袋」の信仰があります。底が縫い合わされていない巾着袋を身につけることで、子どもが“すっと”生まれるとされ、安産のご利益があるといわれています。そのため、多くの妊婦さんが安産祈願に訪れる神社としても有名です。
祭礼と年中行事
春の「花嫁まつり」
毎年4月に行われる春季例祭は、「花嫁まつり」とも呼ばれています。これは子宝や家内安全を願う行事で、美しい花嫁衣装に身を包んだ女性たちによる花嫁行列や、子どもたちの稚児行列が神社を彩ります。
秋の「喧嘩祭り」
10月に催される秋季大祭では、古式にのっとった流鏑馬(やぶさめ)神事が行われ、弓矢で的を射る姿が勇壮に披露されます。また、「喧嘩祭り」とも称される神輿の渡御では、担ぎ手たちが力強くぶつかり合いながら神輿を運ぶ様子が見どころです。この祭りは五穀豊穣を祈る重要な行事であり、地元はもとより観光客でも賑わいます。
高瀧神社の御祭神
高瀧神社には以下の三柱の神々が祀られています。
- 瓊瓊杵尊(ににぎのみこと):天照大神の孫で、天孫降臨の神。
- 玉依姫命(たまよりひめのみこと):子育て・安産の神として信仰される女神。
- 別雷命(わけいかづちのみこと):雷神であり、厄除けや成長祈願の神として崇敬される。
高瀧神社の歴史
創建と伝承
社伝によると、白鳳元年(672年)8月に瓊瓊杵尊を祀り、「高滝神」と称したのが始まりとされています。その翌年には、山背国(現在の京都府)から両加茂社を勧請し、この地域を「加茂村」と改めました。
『日本三代実録』に記される古社
平安時代の歴史書『日本三代実録』には、貞観10年(869年)9月17日に「上総国高滝神」が従五位下の神階を授けられたことが記されており、当時から国家的にも認められた格式の高い神社であったことがうかがえます。
古代・中世
『日本三代実録』によると、貞観10年(869年)9月17日に上総国の「高滝神」に従五位下の神階が授けられました。平安時代末期の承安年間(1171年 - 1175年)には、加茂社を勧請し、加茂大明神を称しました。
その後、戦国時代に里見氏が上総国大多喜城に進出した際には、祈願所としての役割を担い、社領として27石が認められました。さらに、徳川家康が関東に入部すると、社領10石を安堵されました。
近世の発展
江戸時代には「加茂大明神」や「賀茂大神宮」と称され、加茂村と呼ばれる周辺地域の中心的存在でした。近隣53か村を氏子とする神社となり、春と秋に2度の祭礼が行われました。
秋の祭礼では御輿が養老川の岸まで渡御し、市原郡内外から多くの参詣者が訪れる賑わいを見せました。安産や幼児の健康を願う人々の信仰の場でもありました。現在の社殿は享保12年(1727年)に建てられたものです。
近代以降の発展
明治元年にこの地は鶴舞藩領となり、翌年には鶴舞藩の藩社に指定されました。明治4年(1871年)に廃藩置県により鶴舞藩が廃された後も、地域の人々によって修祀が行われましたが、郷社に格下げされました。1880年(明治13年)には千葉県から県社に指定され、地域の文化的な中心として位置づけられました。
大正年間には、『千葉県市原郡誌』において秋の祭礼の賑わいが「本郡第一の祭祀」と記され、境内には奉納された鶏が数十羽住んでいたといわれています。
文化財と自然環境
市原市指定文化財
享保12年(1727年)に再建された本殿、文化9年(1812年)に再建された末社社殿はいずれも市原市の指定文化財として保存されています。江戸時代の建築様式を今に伝える貴重な建造物です。
千葉県指定天然記念物「高瀧神社の森」
神社を取り囲む豊かな森は、千葉県の天然記念物にも指定されています。古代から続く鎮守の杜(もり)には、四季折々の植物が生い茂り、静寂と神秘に包まれた空間が広がります。
アクセス情報
公共交通機関でのアクセス
高瀧神社へは公共交通機関を利用してのアクセスも便利です。
- 最寄り駅: 小湊鉄道線「高滝駅」
- バス停: 小湊バス「高瀧神社」停留所
また、「市原鶴舞バスターミナル」や「小湊鉄道線里見駅」からも路線バスが運行されており、観光客でも訪れやすい立地にあります。
車でのアクセス
- 最寄りIC: 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)「市原鶴舞インターチェンジ」
インターチェンジから車で10分ほどの距離に位置しており、駐車場も完備されています。
おわりに
高瀧神社は、千年以上の歴史を持つ格式ある古社でありながら、今もなお地域の人々に親しまれ続けている特別な場所です。自然に囲まれた厳かな境内、美しい社殿、そして季節ごとの祭礼が訪れる人々の心を惹きつけてやみません。歴史に触れながら心を静めるひとときを、ぜひ高瀧神社で体験してみてはいかがでしょうか。