吉保八幡神社は、千葉県鴨川市仲にある由緒正しい神社です。 主祭神として誉田別尊(ほんだわけのみこと)を祀り、配祀として素戔嗚尊(すさのおのみこと)と 天忍日命(あめのおしひのみこと)をお祀りしています。旧社格は郷社に列しています。
天長6年(829年)、吉保郷の鎮守として宇佐八幡から勧請され、文安年間(1444~1448年)には 里見氏の家臣緒方茂次によって祈願所として再建されたと伝えられています。現在の本殿は 天明年間(1781~1789年)に造営され、その彫刻は初代伊八による作品とされています。
明治6年(1873年)には郷社に列せられ、地域の信仰の中心として重要な役割を果たしてきました。
本殿は神池の中の島に建つ三間流造で、向拝の彫刻が特徴的です。 中央には宝珠を握る龍、左右には「波に犀」の彫刻が配されています。これらは厚みのある表現が施されており、 初代伊八の作風を示す貴重な文化財です。
吉保八幡神社の流鏑馬(やぶさめ)は、毎年9月の最終日曜日に行われる神事で、千葉県の無形民俗文化財に指定されています。 約210メートルの馬場を疾走する禰宜(ねぎ)が、早稲(わせ)、中稲(なかて)、晩稲(おくて)を象徴する3つの的を目がけて 矢を放ち、五穀豊穣を祈願するとともに翌年の稲作の適種や豊凶を占います。
神事の役目を担う禰宜は、1週間前から精進潔斎を行い、別火生活を送ります。 当日の朝には「朝祭り」が行われ、禰宜迎えの儀式では笛や太鼓の音色とともに練り歩きが行われます。
「やぶさめ」は、まず試乗を行った後、本番では的に向けて9本の矢を放ちます。 矢の命中結果により、翌年の稲作の適種や豊凶を占う重要な儀式です。 的は虫除けのご利益があるとされ、多くの参拝者が持ち帰ります。
昭和6年(1931年)に建立された白御影石の社号碑には、元陸軍大将一戸兵衛の書が刻まれています。
平成14年(2002年)に再建された朱塗りの両部鳥居は高さ約5メートル、幅約4メートルの立派な構造です。
樹齢100年以上とされるクスノキが御神木として境内にそびえ立ち、神池は枯れることなく湧水が湧き続けています。 神池には水分神(みまくりのかみ)が祀られ、雨乞いの神事も行われています。
昭和15年(1940年)に出征兵士の健康と武運を祈願して建立された狛犬や、文化財として貴重な彫刻が施された本殿・拝殿、 古くから伝わる庚申塔など、見どころが多くあります。
吉保八幡神社は、JR安房鴨川駅から路線バスで約20分、「吉保」停留所で下車して徒歩で訪れることができます。 地元の歴史や文化に触れることができる貴重な場所として、多くの参拝者が訪れています。
吉保八幡神社は、地域の信仰と伝統文化を象徴する神社です。 特に「流鏑馬神事」は古式ゆかしい儀式として現代にも受け継がれ、地域の文化遺産として高い価値を持っています。 千葉県鴨川市を訪れる際には、ぜひ足を運び、その歴史と風情を堪能してください。