和田浦の捕鯨とクジラ食文化の歴史
13世紀から続く沿岸捕鯨の伝統
南房総地域では、鎌倉時代後半(13世紀頃)から室町時代(14〜15世紀頃)にかけて、すでに沿岸捕鯨が行われていたと考えられています。鎌倉市内の遺跡から発掘された多くの鯨骨は、この地域が古くからクジラと深い関わりを持っていた証です。
伝統的な「突き取り法」による捕鯨
日本各地で主流となった「網取り法」による捕鯨ではなく、和田浦では「突き取り法」と呼ばれる方法で一貫して捕鯨が行われてきました。これはツチクジラが深く潜る習性を持っているためで、この地域ならではの捕鯨手法として受け継がれています。
クジラ料理の数々:素朴な味から贅沢な一品まで
地元料理の定番:刺身・竜田揚げ・ベーコン
クジラ肉の魅力は、その独特な風味と豊かなうま味にあります。新鮮なクジラ肉を薄く切った刺身は、赤身のしっとりとした味わいが特徴で、醤油やわさびとともにいただくのが一般的です。また、衣をつけてカリッと揚げた竜田揚げは、外はサクサク、中はジューシーで食べ応え抜群です。さらに、燻製にしてスライスしたベーコンも、香ばしい風味があり人気の一品です。
贅沢に味わう「クジラご膳」
より多彩なクジラ料理を一度に楽しみたい方には、「クジラご膳」がおすすめです。これは、前菜からメイン、汁物やご飯に至るまで、すべてクジラを使った品々で構成されており、まるで懐石料理のような豪華な内容となっています。季節の野菜と組み合わせた料理も多く、見た目にも美しい一膳です。
名物「くじらのたれ」:懐かしき南房総の保存食
くじらのたれとは?
「くじらのたれ」は、千葉県南房総地域に伝わる郷土料理で、クジラ肉を特製のタレに漬け込み、風干しした保存食です。表面は炭や海苔のように真っ黒で、見た目は木の皮にも似ています。使用されるのは主に体長12メートルほどのツチクジラで、豊かなうま味と濃厚な味付けが特徴です。
名前の由来と製法
「くじらのたれ」という名前は、クジラ肉を「タレ」に漬け込んで干す製法から名付けられたといわれています。また、かつては各家庭で、軒先に吊るして干していたことから、その姿が「垂れている」ように見えたという説もあります。
作り方と食べ方
製法は非常にシンプルですが、手間暇がかかります。まず、クジラ肉を醤油、酒、しょうがを合わせた特製のタレに漬け込みます。味がよく馴染んだら、取り出して生乾きになるまで自然乾燥させます。食べる際には軽く火で炙ると、香ばしさが増し、より一層美味しくいただけます。
一年中楽しめる懐かしい味
保存性に優れているため、「くじらのたれ」は年間を通して食べられます。お酒の肴やご飯のおかずとして地元の人々に親しまれており、冷蔵庫のなかった時代には貴重な保存食として重宝されてきました。今もなお、「くじらのたれ」は南房総の人々にとって懐かしい味であり、里帰りした際にはお土産として買って帰る人も多いといいます。
和田浦を訪れたら味わいたい!クジラ料理と観光
地元飲食店で味わう旬のクジラ
南房総市和田浦には、クジラ料理を提供する飲食店が数多くあります。観光の合間に立ち寄って、地元の漁師が届けてくれる新鮮なクジラ肉を使った料理をぜひ味わってみてください。店によっては、ツチクジラの解体の様子を見学できる場合もあり、学びのある体験も可能です。
お土産にぴったりの「くじらのたれ」
お土産として人気なのが、やはり「くじらのたれ」です。真空パックで販売されており、家庭でも手軽に楽しむことができます。お酒のお供や夕食の一品として出せば、ご家族や友人にも喜ばれることでしょう。
南房総の味を未来へ伝える
かつては日本各地で盛んだった捕鯨文化ですが、今では和田浦のような地域が、その歴史と味を大切に守り続けています。クジラ料理は、単なる食文化にとどまらず、南房総の人々の暮らしや知恵、そして自然との共生を感じさせてくれる存在です。
ぜひ、南房総を訪れ、豊かな自然とともに、クジラ料理の奥深い魅力を体験してみてください。