宗派とご詠歌
宗派は真言宗系の単立寺院であり、密教の伝統を今に伝える修行道場としての一面も持っています。本尊・十一面観音菩薩のご真言は次の通りです。
本尊真言
おん まか きゃろにきゃ そわか
ご詠歌
このほどは よろずのことを 飯沼に
ききもならはぬ 波の音かな
円福寺の歴史
創建と伝説
円福寺の起源は、神亀元年(724年)にまでさかのぼります。寺伝によると、当時、地元の漁師が海で十一面観音像を網ですくい上げ、それをきっかけに霊験あらたかな地として信仰が始まったと伝えられています。その後、弘仁年間(810年〜824年)には、弘法大師(空海)がこの地を訪れ、観音像に開眼供養を施したとされます。
中世から江戸時代
鎌倉時代以降、当地を支配していた海上氏の庇護を受けて寺勢は興隆し、天正6年(1578年)には八間四方の観音堂が建立されました。さらに、天正19年(1591年)には徳川家康より朱印を賜り、諸堂の整備が進められました。
江戸時代中期の元禄15年(1702年)には、鐘楼と多宝塔が焼失したものの、安永2年(1773年)には観音堂を十間四方に改築し、仁王門・鐘楼・多宝塔などを再建しました。
戦災と復興
しかし、昭和20年(1945年)の空襲により、観音堂、仁王門、鐘楼、太子堂、馬頭観音堂、二十三夜堂、荼枳尼天堂など、多くの伽藍が焼失しました。旧・龍蔵大権現堂は現在「銚港神社」として残されています。
現代の復興と文化活動
近年では、2009年(平成21年)に高さ33.55mの五重塔が建立され、荘厳な風景が再現されました。また、2014年(平成26年)より、慶應義塾大学斯道文庫の協力のもと、年2回の寺宝展を開催しています。
さらに、寺が所蔵する貴重な古典籍がテレビ番組『開運!なんでも鑑定団』で紹介され、2016年には嵯峨本『徒然草』が1500万円、2025年には宋時代の「韓昌黎集」9冊が3億円の鑑定額を得るなど、文化的価値も高く評価されています。
境内の主な建造物
本堂・飯沼観音エリア
- 本堂(飯沼観音) - 本尊を安置する中心的建物。
- 銚子大仏 - 境内にある大仏像。
- 五重塔 - 高さ33.55mの荘厳な建築。
- 鐘楼堂 - 梵鐘が設置されている堂。
- 仁王門 - 入口を守護する巨大な門。
- 稲荷堂 - 五穀豊穣の祈願所。
- 飯沼水準原標石 - 貴重な土木遺産。
本坊・大師堂エリア
- 大師堂 - 弘法大師を祀る堂。
- 涅槃殿(宝物殿) - 寺宝を展示する施設。
文化財の紹介
重要文化財
- 鐃(にょう) - 仏具の一種で、現在は奈良国立博物館に寄託されています。
千葉県指定文化財
- 梵鐘 - 享徳11年(1460年)在銘の古鐘。
- 釈迦涅槃図 附 釈迦涅槃図由来書3巻 - 貴重な仏教絵画とその来歴を伝える文書。
土木学会選奨土木遺産
- 飯沼水準原標石 - 利根川や江戸川の水位測量の基準点として設置された石標であり、日本における「河川測量の原点」とされています。2015年に日本選奨土木遺産として認定されました。
交通アクセス
- 電車: 銚子電鉄・観音駅から徒歩約5分。
- バス: 銚子駅から、ちばこうバス(外川線・海鹿島線)で「陣屋町」下車、または川口線で「銚子観音」下車。
- 高速バス: 東京駅から犬吠埼・銚子線で「陣屋町」下車。
坂東三十三観音の札所としての役割
前後の札所
- 第26番札所:清滝寺
- 第27番札所:円福寺(飯沼観音)
- 第28番札所:龍正院
まとめ
円福寺は、およそ1300年もの歴史を持つ真言密教の古刹であり、宗教的な信仰だけでなく、文化財や建築、美術、さらには土木遺産としての価値も備えた名刹です。坂東三十三観音の巡礼地としても全国から多くの人々が訪れ、今なお香煙が絶えることはありません。
歴史・文化・信仰が融合するこの場所は、訪れる人々に静謐で心豊かな時間を提供してくれるでしょう。