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円福寺(飯沼観音)

(えんぷくじ いいぬま かんのん)

円福寺は、千葉県銚子市に所在する真言宗系単立の古刹であり、「飯沼観音」の名でも親しまれています。山号は「飯沼山」、本尊は「十一面観世音菩薩」で、坂東三十三観音霊場の第27番札所として、全国から多くの参拝者が訪れています。寺院の隣には、かつて龍蔵大権現堂と呼ばれていた「銚港神社」もあり、古くから地域信仰の中心的存在となっています。

宗派とご詠歌

宗派は真言宗系の単立寺院であり、密教の伝統を今に伝える修行道場としての一面も持っています。本尊・十一面観音菩薩のご真言は次の通りです。

本尊真言

おん まか きゃろにきゃ そわか

ご詠歌

このほどは よろずのことを 飯沼に
ききもならはぬ 波の音かな

円福寺の歴史

創建と伝説

円福寺の起源は、神亀元年(724年)にまでさかのぼります。寺伝によると、当時、地元の漁師が海で十一面観音像を網ですくい上げ、それをきっかけに霊験あらたかな地として信仰が始まったと伝えられています。その後、弘仁年間(810年〜824年)には、弘法大師(空海)がこの地を訪れ、観音像に開眼供養を施したとされます。

中世から江戸時代

鎌倉時代以降、当地を支配していた海上氏の庇護を受けて寺勢は興隆し、天正6年(1578年)には八間四方の観音堂が建立されました。さらに、天正19年(1591年)には徳川家康より朱印を賜り、諸堂の整備が進められました。

江戸時代中期の元禄15年(1702年)には、鐘楼と多宝塔が焼失したものの、安永2年(1773年)には観音堂を十間四方に改築し、仁王門・鐘楼・多宝塔などを再建しました。

戦災と復興

しかし、昭和20年(1945年)の空襲により、観音堂、仁王門、鐘楼、太子堂、馬頭観音堂、二十三夜堂、荼枳尼天堂など、多くの伽藍が焼失しました。旧・龍蔵大権現堂は現在「銚港神社」として残されています。

現代の復興と文化活動

近年では、2009年(平成21年)に高さ33.55mの五重塔が建立され、荘厳な風景が再現されました。また、2014年(平成26年)より、慶應義塾大学斯道文庫の協力のもと、年2回の寺宝展を開催しています。
さらに、寺が所蔵する貴重な古典籍がテレビ番組『開運!なんでも鑑定団』で紹介され、2016年には嵯峨本『徒然草』が1500万円、2025年には宋時代の「韓昌黎集」9冊が3億円の鑑定額を得るなど、文化的価値も高く評価されています。

境内の主な建造物

本堂・飯沼観音エリア

本坊・大師堂エリア

文化財の紹介

重要文化財

千葉県指定文化財

土木学会選奨土木遺産

交通アクセス

坂東三十三観音の札所としての役割

前後の札所

まとめ

円福寺は、およそ1300年もの歴史を持つ真言密教の古刹であり、宗教的な信仰だけでなく、文化財や建築、美術、さらには土木遺産としての価値も備えた名刹です。坂東三十三観音の巡礼地としても全国から多くの人々が訪れ、今なお香煙が絶えることはありません。
歴史・文化・信仰が融合するこの場所は、訪れる人々に静謐で心豊かな時間を提供してくれるでしょう。

Information

名称
円福寺(飯沼観音)
(えんぷくじ いいぬま かんのん)

銚子・佐原

千葉県