設立の経緯と名称変更
DIC川村記念美術館は、DICの総合研究所の敷地内に1990年5月2日に「川村記念美術館」として開館しました。設立当初は「川村インキ製造所」、後の「大日本インキ化学工業株式会社」であったDICとその関連会社が収集した美術品を展示しています。2011年4月1日には、「DIC川村記念美術館」と名称が変更され、現在もその名で知られています。
美術館の概要
立地と建物の特徴
美術館は千葉県佐倉市の郊外に位置し、30万平方メートルにも及ぶDIC株式会社総合研究所の敷地内に建設されています。広大な庭園に囲まれた美術館は、ヨーロッパの古城やワインセラーを思わせる優雅な建物です。設計は海老原一郎氏が手掛け、展示館はゆったりとした空間で、美術鑑賞が楽しめるようにデザインされています。
館内の構造と展示内容
館内には、現代美術の巨匠たちの作品を展示するための広大な展示室があります。20世紀の抽象絵画の巨匠、マーク・ロスコの作品を展示した「ロスコ・ルーム」も特に有名で、彼がニューヨークのシーグラム・ビルディングのために制作した作品7点を鑑賞できます。
主な収蔵品と展示品
世界的に評価される名作の数々
DIC川村記念美術館では、世界中から収集された名作が展示されています。公式ウェブサイトの「主なコレクション」によると、以下のような著名な作品が収蔵されています。
- レンブラント 『広つば帽を被った男』(1635年)
- モネ 『睡蓮』(1907年)
- ルノワール 『水浴する女』(1891年)
- エルンスト 『石化した森』(1927年)
- ジャクソン・ポロック 『緑、黒、黄褐色のコンポジション』(1951年)
- マーク・ロスコ 『無題』(シーグラムビル壁画)(1958年、1959年)
- フランク・ステラ 『ヒラクラ III』(1968年)
バーネット・ニューマン『アンナの光』の譲渡
館内の収蔵品の中には、以前DIC川村記念美術館が所有していたものの、日本国外の企業へ譲渡されたものも存在します。バーネット・ニューマンの『アンナの光』(1968年)はその一例で、2013年に譲渡が発表されました。
日本画の収集方針の変更
かつてDIC川村記念美術館は、尾形光琳や長谷川等伯など、日本の近世絵画の優れた作品も展示していました。しかし、2017年12月3日をもって日本画の展示を終了し、収蔵していた日本画は他の施設へ譲渡されました。特に、重要文化財の長谷川等伯筆『烏鷺図』は、実業家の前澤友作氏に譲渡されることが公式に発表されています。
美術館の運営と未来
長期休館の発表と影響
2024年8月、DICは2025年1月下旬を目処に長期休館を検討していることが報じられました。この決定は、「価値共創委員会」からの助言に基づくもので、東京都内への移転や美術館の規模縮小、さらには運営の休止も検討されています。
しかし、休館予定が発表された後、土日祝日の来館者数が発表前の5倍に急増しました。この影響を受けて、休館開始予定は2ヵ月延期され、2025年3月下旬まで開館を続けることが決定されました。また、地元佐倉市では、美術館の存続を求める署名活動が行われ、4万7千件以上の署名が集まりました。これらの署名は、近々DICに提出される予定です。
今後の動向
美術館の休館に関する発表や、その後の来館者増加に伴う対応は、DIC川村記念美術館が地域社会や文化に与える影響の大きさを示しています。今後の美術館の運営については注目が集まっており、地元住民や美術愛好家からの期待も高まっています。
沿革
主な歴史的な出来事
- 1990年(平成2年)5月2日 - 川村記念美術館として開館。
- 2007年(平成19年)7月2日 - リニューアル工事のため休館。
- 2008年(平成20年)3月15日 - リニューアルオープン。延床面積が改築前の約1.5倍に拡張。
- 2011年(平成25年)4月1日 - 「DIC川村記念美術館」に名称変更。
- 2025年(令和7年)1月下旬 - 休館予定と発表されるが、来館者急増により同年3月下旬まで開館を延長。
開館時間と交通アクセス
開館時間
- 4月 - 10月:9:30 - 17:00
- 11月 - 3月:9:30 - 16:30
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始および特別整理期間など。
交通アクセス
DIC川村記念美術館へのアクセス方法は複数あります。JR東日本総武本線の佐倉駅からは無料送迎バスで約20分、京成電鉄京成本線の京成佐倉駅からは無料送迎バスで約30分です。また、東京駅八重洲口からは「国立歴史民俗博物館」行きの高速バスを利用し、約1時間20分で「DIC川村美術館」バス停に到着します。
まとめ
DIC川村記念美術館は、千葉県佐倉市の広大な敷地内にある、美術愛好家にとっての重要な文化施設です。その豊富な収蔵品は、世界的な巨匠の作品から日本の伝統美術まで多岐にわたり、多くの人々に愛されてきました。2025年の休館が検討されていますが、地域の存続運動や来館者の増加から、その未来にはまだ多くの可能性が残されています。