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うなぎ料理(成田)

(りょうり)

元禄の大衆文化が育んだ郷土料理

千葉県成田市といえば、成田山新勝寺や成田国際空港などが広く知られていますが、実は全国的にも珍しい「うなぎの街」としても名を馳せています。成田のうなぎ料理は、歴史と文化、そして素材へのこだわりに裏打ちされた、味わい深い郷土料理として多くの観光客に親しまれています。

成田のうなぎ料理のはじまり

江戸の庶民文化と成田の発展

成田のうなぎ料理が広く知られるようになった背景には、江戸時代の歌舞伎役者・初代市川団十郎の存在が大きく関わっています。成田出身であった市川団十郎の人気と共に、彼の地元である成田が江戸庶民の間で知られるようになり、成田山新勝寺への参詣も盛んになりました。

交通の便が良く、江戸から気軽に訪れられる成田は、やがて庶民の行楽地として賑わいを見せるようになります。そして、門前町の旅館や料理店では、利根川や印旛沼などの水産資源を活かして、夏場の滋養強壮として重宝されていた「うなぎ料理」を提供するようになりました。

うなぎの名店が連なる成田山表参道

徒歩15分圏内で味わえる多彩なうなぎ料理

成田のうなぎ料理の魅力を存分に堪能できる場所が、JR成田駅から徒歩約15分、約800メートルの距離に伸びる「成田山表参道」です。この通り沿いには、うなぎを提供する老舗旅館や料理店など60軒以上が軒を連ね、各店が伝統の味とおもてなしで競い合っています。

香ばしい匂いが漂う参道を歩きながら、各店の雰囲気を楽しむのも一興。成田はまさに全国的にも珍しい「うなぎの街」として、観光とグルメが融合した特別な体験を提供してくれます。

名店紹介:成田で訪れたい老舗うなぎ店

川豊本店(かわとよ ほんてん)

成田山新勝寺の表参道でひときわ賑わいを見せるのが、明治43年(1910年)創業の「川豊本店」です。築100年以上の木造日本家屋は、かつて旅籠(はたご)として利用されていた趣ある建物で、現在も風情ある佇まいが訪れる人々を魅了しています。

店頭では、長さ約3メートル、幅約1メートル、厚さ30センチの巨大ないちょうの一枚板のまな板が存在感を放ち、その上で熟練の職人がうなぎを手際よくさばき、串打ちし、炭火で丁寧に焼き上げていきます。このオープンキッチンの様子は、まさに「料理のライブステージ」。割きたて・蒸したて・焼きたてのうなぎは、香ばしさとふっくらとした食感が堪能できる絶品です。

駿河屋(するがや)

成田山新勝寺の総門脇に位置する「駿河屋」もまた、江戸時代創業の歴史を誇る老舗うなぎ専門店です。元々は旅館や割烹料理を提供していたこの店は、時代と共に「うなぎ」に特化した名店へと進化しました。

駿河屋のうなぎは、注文を受けてから割き、白焼きし、蒸して、長州備長炭でじっくりと焼き上げるという丁寧な手順を踏みます。香ばしい焦げ目が食欲をそそり、身は驚くほどふっくらと仕上がります。

こだわりのたれ・米・水

駿河屋の美味しさを支えるもうひとつの要素が、調味料と食材への徹底したこだわりです。秘伝のたれには、木桶で仕込んだ下総醤油、三河の白九重本味醂、氷砂糖といった、選び抜かれた素材が使用されており、すっきりとした上品な甘みと深みのある味わいを引き立てます。

お米は千葉県産コシヒカリのみを使用し、毎日汲みに行くという地元の名水「横芝小堤(おんづみ)の名水」で炊き上げます。付け合わせの漬物もすべて自家製で、細部に至るまで丁寧な仕事が感じられる逸品です。

幻の「大井川共水うなぎ」

さらに駿河屋では、静岡県・大井川の南アルプス伏流水と厳選された飼料で育てられた、幻のブランドうなぎ「大井川共水うなぎ」を提供しています。通常の養殖うなぎの2倍以上の時間をかけて育てられるこのうなぎは、天然ものをも凌ぐとされる上質な甘みと香りが特長です。

希少なため、全国でも限られた名店にしか卸されないこのうなぎを味わえるのは、まさに特別な体験といえるでしょう。

まとめ:成田観光で味わう、歴史とともに歩むうなぎの味

成田のうなぎ料理は、ただのご当地グルメではありません。江戸時代から続く庶民文化と信仰、そして地元の自然と人々の努力が織りなす、深い歴史と伝統のある食文化です。

成田山参拝の前後に、表参道で香ばしいうなぎの香りに誘われながら、老舗の味をじっくりと堪能するのは、成田ならではの観光体験。歴史ある街の風情に包まれながら、職人の技とこだわりの詰まった逸品を味わえば、旅の思い出は一層深まることでしょう。

ぜひ成田を訪れた際には、「うなぎの街」としての魅力にも注目し、その奥深い味わいとともに、豊かなひとときをお楽しみください。

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名称
うなぎ料理(成田)
(りょうり)

成田・佐倉

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