概要
旧御子神家住宅は、御子神家が1779年(安永8年)に建てたもので、安房地方の「直屋(すごや)型」の民家として知られています。この「直屋型」とは、床を張った部分と土間が一つの屋根で覆われている形式の建物を指します。内部の座敷回りには縁側が設けられ、引き違いの板戸に半間の明障子が使われています。
普請入用覚帳と屋根替覚帳
建築当時の費用明細を記録した「普請入用覚帳」や、1844年(天保15年)に屋根の葺き替え費用を記した「屋根替覚帳」も現存しており、これらの文書も重要文化財として指定されています。こうした資料は、当時の建築様式や生活の様子を知る上で貴重な情報を提供しています。
移築と保存
旧御子神家住宅は、1969年(昭和44年)6月20日に国の重要文化財に指定されました。その後、1973年(昭和48年)6月に千葉県成田市の「千葉県立房総のむら」へ移築され、復元修理が行われました。復元修理の際には、改変されていた間取りなどを建設当初の状態に戻す作業が行われ、現在の姿に至っています。
建築の特徴
旧御子神家住宅の建築面積は約126.3平方メートルで、木造の平屋建ての茅葺屋根です。このような構造は、江戸時代中期の安房地方の典型的な農家建築として特徴的であり、歴史的な価値を持つ建物として高く評価されています。
千葉県立房総のむら
千葉県立房総のむらは、千葉県印旛郡栄町にある体験型博物館です。この博物館は、成田市と栄町にまたがる敷地内に歴史的建造物や国の重要文化財、史跡が保存されており、訪れる人々に多様な歴史体験を提供しています。旧御子神家住宅もこの施設内に移築保存されています。
概要
千葉県立房総のむらは、1986年(昭和61年)に開館し、江戸時代の商家や武家屋敷、農村などを再現したエリアが特徴です。また、来場者は伝統的な技術や生活様式を体験できる施設でもあり、実演やワークショップを通じて昔の日本の文化を直接感じることができます。
施設のエリア構成
館内は「ふるさとの技体験エリア」と「風土記の丘エリア」の2つに分かれており、前者では江戸から明治時代にかけての町並みを再現し、後者では古墳群や歴史的建造物を保存しています。
伝統行事と体験
年間を通じて、房総のむらでは伝統行事や郷土芸能の再現が行われています。無病息災を祈るどんど焼きや、ひな祭り、秋のまつり、七夕などの行事は、訪問者にとって日本の文化や歴史を身近に感じる貴重な機会となります。また、武家の武術や村の鍛冶屋など、様々な伝統技術の実演や制作体験も可能です。
食の体験
1988年(昭和63年)には「食体験」が始まり、古代米を使った料理や、かまどでの炊飯、炭火でのうなぎのかば焼き作り、水ようかん作りなど、訪問者が実際に参加できる体験プログラムも実施されています。
歴史的背景と沿革
千葉県立房総のむらは、当初「房総風土記の丘」として1976年(昭和51年)に開設されましたが、2004年(平成16年)に房総のむらと統合されました。施設内には、竜角寺古墳群第101号古墳や、旧学習院初等科正堂といった歴史的建造物が移築・保存されています。
房総のむらの建設と発展
房総のむらは、1986年に正式に開館し、江戸時代や明治時代の商家、農家、武家屋敷などを再現した建物が次々に完成しました。以降も多くの文化財や建造物が追加され、来館者に対して日本の伝統文化や歴史を体感できる施設として発展しています。
利用情報
千葉県立房総のむらの開館時間は午前9時から午後4時30分までで、毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)と年末年始が休館日です。常設展の入館料は一般300円、高校生・大学生150円、中学生以下は無料で、その他特別展示や体験プログラムも提供されています。
アクセス方法
公共交通機関を利用する場合、JR成田駅からバスで約22分、JR下総松崎駅から徒歩約30分です。また、自動車でのアクセスも可能で、東関東自動車道成田インターチェンジから約10キロメートルの位置にあります。館内には無料駐車場が4か所あり、約300台の車を駐車可能です。
ロケ地としての房総のむら
千葉県立房総のむらは、その歴史的な町並みが再現されていることから、多くの映画やテレビドラマのロケ地として使用されています。NHK大河ドラマや映画『蟬しぐれ』など、数多くの作品の舞台となっています。
まとめ
旧御子神家住宅は江戸時代の民家建築の重要な遺産であり、千葉県立房総のむらに移築されて保存されています。房総のむらは、日本の歴史や文化を体験できる施設として、家族連れや歴史愛好家にとって魅力的な観光地となっています。旧御子神家住宅を訪れることで、江戸時代の生活様式や建築技術に触れる貴重な機会を得られるでしょう。