創立の歴史
山階鳥類研究所は、1932年(昭和7年)、元皇族の山階芳麿(旧皇族であった芳麿王)によって、彼の自宅であった東京都渋谷区南平台町に設立された「山階家鳥類標本館」を母体としています。10年後の1942年(昭和17年)には、より本格的な研究機関として「山階鳥類研究所」が正式に設立されました。
我孫子市への移転
1984年(昭和59年)、山階鳥類研究所は東京都から千葉県我孫子市に移転しました。この移転により、手賀沼近くの豊かな自然環境の中で鳥類の研究が進められるようになり、地域との結びつきも強化されました。我孫子市は、鳥類や自然環境の保護活動でも知られており、同市の象徴的な存在となっています。
皇室との関係
山階鳥類研究所は、創立者が皇族出身であることから皇室との関係が深く、1992年(平成4年)から2005年(平成17年)まで、紀宮清子内親王(現:黒田清子)が非常勤研究員として務めていました。さらに、2023年(令和5年)4月1日現在、秋篠宮文仁親王が総裁を務めており、皇室との縁は続いています。
運営体制
現在、山階鳥類研究所は公益財団法人として運営されており、理事長は壬生基博氏、専務理事は林良博氏、所長は小川博氏が務めています。創立時には文部省(現:文部科学省)所管の財団法人として設立されましたが、公益法人制度改革に伴い、2012年(平成24年)4月1日付けで公益財団法人に移行しました。
研究内容と特徴
山階鳥類研究所は、鳥類研究の中心的な役割を果たしており、以下のような多岐にわたる研究を行っています。
- 形態学的標本の収集と保存: 鳥類研究の基礎資料となる標本の収集と保存を行っています。これにより、長期にわたる研究に資するデータの蓄積が可能です。
- 図書資料の収集と保存: 鳥類学や関連分野に関する豊富な図書資料を収集し、専門家や研究者に対して貴重な資料を提供しています。
- 鳥類標識調査: 足環やマーキングを用いて、鳥類の渡りや寿命、生息数のモニタリングを行っています。
- 絶滅危惧種の保全研究: アホウドリやヤンバルクイナなど、絶滅の危機に瀕している鳥類の保全に関する研究を行い、種の保護に取り組んでいます。
我孫子市鳥の博物館との関係
山階鳥類研究所の移転を契機に、1990年(平成2年)には「我孫子市鳥の博物館」が建設されました。これは、我孫子市が運営する鳥類に関する博物館であり、山階鳥類研究所との連携も強いですが、組織上は独立しています。鳥の博物館は、市民や観光客に対して鳥類の知識を提供する場として重要な役割を果たしています。
一般公開について
山階鳥類研究所は主に研究機関であり、一般的に公開されているスペースはありません。しかし、月に1回「所内見学会」が開催され、事前予約制で所内を見学できる機会が設けられています。また、毎年秋に開催される「ジャパン・バード・フェスティバル」では、「見にレクチャー」という特別なイベントが行われ、研究所の活動を紹介しています。
所内見学会
「所内見学会」は原則として毎月第4金曜日に実施されており、午前と午後の2回に分かれて行われます。各回の見学時間は約1時間で、映像や講義を通じて、研究所の概要や研究活動について学ぶことができます。この見学会は、所内の各部署を案内するものではなく、研究所の全体像を紹介する内容になっています。見学には事前予約が必要です。
ジャパン・バード・フェスティバルでの「見にレクチャー」
毎年秋に我孫子市内で開催される「ジャパン・バード・フェスティバル」では、山階鳥類研究所の講堂を会場に、所員による「見にレクチャー」が行われます。この催しは、スライドやパワーポイントを用いて、研究所の活動や研究成果を紹介するもので、多くの来場者が興味深い講義を楽しむことができます。
テーマトーク(我孫子市鳥の博物館)
「テーマトーク」は、隣接する我孫子市鳥の博物館で開催されるイベントで、山階鳥類研究所の職員が鳥類研究に関するテーマを一般向けに解説します。毎月第2土曜日に開催されていましたが、現在は第3土曜日に移行し、2018年度以降も継続して実施されています。開催日や内容については、公式ウェブサイトでの確認が推奨されます。
今後の展望と活動
山階鳥類研究所は、鳥類の研究と保護において日本国内外で重要な役割を果たし続けています。特に、絶滅危惧種の保護活動や鳥類の生態に関する長期的なモニタリングは、持続可能な環境保護に直結する重要な研究です。今後も、鳥類の研究を通じて自然環境の保全や人類と自然の共生に貢献する活動が期待されています。
アクセスと見学情報
所在地とアクセス
山階鳥類研究所は千葉県我孫子市に所在しており、公共交通機関や車でのアクセスが可能です。我孫子市駅からバスやタクシーを利用して訪れることができます。
就業日と時間
山階鳥類研究所の就業日は、月曜日から金曜日まで(祝日・年末年始を除く)で、営業時間は午前10時から午後5時までです。一般公開は行われていませんが、前述の「所内見学会」や特別イベントへの参加は可能です。
見学の予約
所内見学会への参加は事前予約制となっており、公式ウェブサイトから予約手続きを行うことができます。ジャパン・バード・フェスティバルの期間中に行われる「見にレクチャー」や「テーマトーク」についても、事前に確認し予約を行うことをお勧めします。