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矢切の渡し

(やぎり わたし)

矢切という地名は、江戸川を挟んで千葉県松戸市の矢切と東京都葛飾区柴又を結ぶ渡し舟「矢切の渡し」に由来しています。現在でもこの渡し舟は運航されており、観光客だけでなく地元の人々にも利用されています。片道料金は2018年12月時点で大人200円、子供・自転車は各100円と手頃な価格です。また、「房総の魅力500選」に選定されているほか、柴又帝釈天界隈とともに環境省の「日本の音風景100選」にも選定されています。

渡しの歴史

江戸時代からの歴史

この渡しは江戸時代初期、江戸幕府が地元民のために設けた利根川水系の河川15ヶ所の渡し場の一つとして設置されました。観光目的ではなく、生活の一環として使われていたものです。かつては官営でしたが、その後は民営に移行し、明治初期から杉浦家が船頭を務め運営を続けています。

明治時代の文学との関連

「矢切の渡し」が全国的に有名になったのは、明治時代の作家・伊藤左千夫による小説『野菊の墓』(1906年)によるものです。この小説は、切ない恋物語を描いた作品で、矢切を舞台にしており、現在も矢切にはこの小説を記念した文学碑が建てられています。

歌謡曲と映画での注目

さらに、昭和時代には歌謡曲「矢切の渡し」が大ヒットし、多くの人々に愛される存在となりました。また、映画『男はつらいよ』シリーズでも度々登場し、特に1969年の第一作で渥美清演じる車寅次郎が帰郷するシーンで使われたことからも注目を集めました。

現在の矢切の渡し

観光地化と日常の交通手段

現在、矢切の渡しは観光目的で利用されることが多いですが、元々は交通手段として使われていたため、渡し場には多少の土産物屋がある程度で、観光地として大きな商業施設などがあるわけではありません。雨天や荒天時には運休となり、風が強い日や混雑時には手漕ぎではなく船外機を使用して運航されることがあります。

アクセスと乗船の様子

矢切側の渡し場は鉄道の駅からやや離れているため、多くの乗客は東京都側の柴又から乗船して往復利用しています。特に年末年始には柴又帝釈天への参詣者で松戸側の渡し場が混雑します。また、2012年4月28日より、京成バスが矢切側の渡し場付近に「矢切の渡し」停留所を新設し、土休日には一日8往復のバスが松戸駅との間を運行しています。

観光案内と地域の魅力

矢切観光案内所

2013年には「矢切観光案内所」が矢切風致保存会の手により開設され、矢切の歴史を学べる展示や、地元で生産された野菜や観光物産品を購入できる場所として親しまれています。特に矢切地区産の新鮮な野菜や特産品は、観光客にも人気です。

運航情報

矢切の渡しは、毎年3月中旬から11月末まで毎日運航されていますが、それ以外の時期には土・日・祝日や帝釈天の縁日の日のみ運航しています。運航時間は10:00から16:00までで、荒天時には運休することもあります。片道の料金は中学生以上200円、子供は100円です。

矢切の地名の由来と歴史

矢切の地名の由来

矢切は千葉県松戸市にある地域で、上矢切、中矢切、下矢切の3つの地区を総称しています。この地域の名前の由来については、いくつかの説があります。一つは、戦国時代の第二次国府台合戦で里見氏の軍が矢が切れたことから「やきれ」→「やきり」→「やぎり」と変化したというものです。もう一つは、矢の飛び交う戦場を嫌い、矢を切る、つまり「矢はもういらない」という意味から来ているという説もあります。

地理と景観

矢切の地形と風景

矢切は松戸市の南南西に位置し、江戸川に沿った農地が広がる地域です。特に矢切斜面林から江戸川沿いの農地まで続く景観は美しく、都市近郊にありながら自然豊かな環境を楽しむことができます。また、住宅地も広がっており、坂川がこの地域を南北に貫いて流れています。

歴史的な土地利用

矢切の西側は縄文時代からの台地で地盤が安定しており、この時期の貝塚も周辺で発見されています。一方、海進によって海に沈んだ地域では地盤があまり良くない地区も見られます。現在は農業が盛んであり、特に矢切地区で栽培される「矢切ねぎ」は太くて甘みが強いことで知られ、2007年には地域団体商標にも登録されました。

アクセス情報

鉄道とバスでのアクセス

矢切へのアクセスは、北総線矢切駅が最寄り駅であり、矢切の観光スポットである「野菊の墓文学碑」までは徒歩10分以内です。また、渡し舟に乗る場合、京成金町線柴又駅から徒歩で10分程度で渡し場に到着します。矢切側からはJR常磐線松戸駅西口から京成バスでアクセスすることができ、土休日には「矢切の渡し」行きのバスも運行されています。

車でのアクセス

車で訪れる場合、国道6号(水戸街道)や国道298号、千葉県道1号市川松戸線(松戸街道)を利用すると便利です。また、東京外環自動車道の松戸インターチェンジが矢切の北側にあるため、車でのアクセスも良好です。

まとめ

矢切の渡しは、歴史ある交通手段としての役割を持ち続けながら、現在では観光地としても親しまれています。伊藤左千夫の文学や、歌謡曲、映画『男はつらいよ』の舞台としても知られ、訪れる人々に日本の歴史と文化を感じさせる場所です。さらに、地元の新鮮な野菜や特産品も楽しむことができるため、訪れる価値のあるスポットです。

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名称
矢切の渡し
(やぎり わたし)

柏・松戸

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